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『希望の資本論』その18

【168~169ページ】
ピケティ 現代における最も大きな課題の「つは、巨大な政治共同体を、民主的かつ個人の権利を尊重し得る手法によって組織することでしょう。スウェーデンで900万人の政治共同体をつくるほうが、フランスで6500万人の政治共同体を組織したり、欧州連合(EU)で5億人の政治共同体をつくったりするよりも簡単です。
しかし、私たちは巨大な政治共同体を組織し、その政府がすることを信頼できるような仕組みを見つけなければなりません。さもなければ、私たちの命迎は強力な資本家たちに握られることになります。金融資本主義の世界で、小さな国々は「隙間産業」として生きていくため、自らの基本的な価値観と正反対のことをしなければならないことも多い。わずかな分け前にあずかろうと、喜んでタックスヘイプンになるんです。フランスはルクセンブルクなどをタックスヘイブンだと批判しています。一方で、世界経済全体から見ればフランスやドイツも小国です。
(つづく)
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『希望の資本論』その17

【163ページ】ピケティ氏と佐藤氏との対談

佐藤 ~。旧ソ連が崩壊してロシアになっていくときに、非常に野蛮な形で資本が蓄積されていくのを見たので、『21世紀の資本』に晋かれているような「トップ0.1%」とか「0.01%」の大金持ちに対して私はあまり好感を持たないんです。
ところで、マルクスの『資本論』では、「労働力商品」のみが価値をつくり出す特殊な性質を持つことになっています。この点についてどう考えますか。

ビケティ 「労働力だけが価値をつくり出す」というのは、どういう意味なんでしょう。「生産物から生じるもうけはすべて労働者が得るべきだ」ということでしょうか。私有財産が地上から廃絶され、そこから利益を得られなくなれば、原則としてもうけはすべて労働者が得ることになり、それのうちどれくらいを(生産を増やすための)再投資に回すかをみんなで決めることができます。ですが、私宥財産の廃絶というのは間違った「答え」だと思います。私有財産をなくせば、たとえば官僚に権力を与えることになり、労働者がよりいっそうの自由を得ることにはつながらないからです。

【164ページ】
佐藤 『資本論』によれば、賃金は生産過程で資本家と労働者の力関係によって決まるのに対し、利潤や配当、地代は、その剰余価値が資本家や地主の問で分配されます。ピケテイさんは、賃金はどのように決まると考えますか。

ピケティ 資産のタイプに応じて、その所有者と労働者の問の力関係は異なると思います。農地を巡る歴史は、産業に投下された資本や、資産としての奴隷の歴史とは異なります。賃金の水準や資本の所有者への利益配分の水準は常に、技術や、社会的、制度的な力関係があいまって決まります。私が本で語ろうとしたのは、異なるグループの人たちが常に「何を得るべきか」についての理論的な根拠をつくり出そうとしてきたという、人類の歴史なのです。
 (つづく)

『希望の資本論』その16

【149ページ】
池上 『資本論』を読むと、実は資本主義によって労働者たちは鍛えられ、能力が開発されていく、あるいはそこで労働者が団結する、そういう組織化する力もついてくるんだということも言っている。資本主義はそういう労働者を育てるというところもあるんですね。資本主義がすべてダメというわけではないということを、実はちゃんと書いてあるんです。

佐藤 それから9年の義務教育、世界基準では大体11年、12年なんですが、それだけの長期間の義務教育がなぜなされるかというと、そういう義務教育で基礎教育をしておかないと、技術革新に対応できないからですよね。要するにOSをもらえるわけなんですよ、この資本主義というシステムに適応できるようにするために。

池上 なるほど。
佐藤 OSを持っていれば、そこに何らかのアプリを入れれば動くようになるわけです。

【152~153ページ】
佐藤 岡崎次郎さんは面白い人で、4億、5億と印税が入ったが、お金を全部使ってしまったと。それで、奥さんと一緒に失踪してしまうんです。~。
それから、国家社会主義者の高畠素之が訳した日本最初の訳を、徳間書店から復刊してもらおうと思っています。文学的センスのある名訳です。彼は戦前、日本で一番最初に『資本論』を訳したのですが、なかなか文学的センスがあるので、訳がいいんですよ。誤訳が多いという人もいるけれど、必ずしもそうではない。この人は『資本論』を訳しているうちに、『資本論』は正しいけれどマルクス主義は間違っている、と思うようになった。そして国家社会主義者になった。どうしてかというと、マルクスは進化論をよく知らない。人間は性悪な存在だから適者生存でやっていくので、この資本主義の論理が適者生存の中に入っていったら大変なことになる。だから最大の暴力装置である国家によって資本を抑えないといけないという主張をした。こういう経緯があるので、左翼系の人は高畠訳を評価しない傾向がある。
(つづく)

『希望の資本論』その15

【143~144ページ】
佐藤 『資本論』を読んだ結果、どんないいことがあるのかというと。資本の論理に巻込まれないためには直接的な人間関係が重要だということがわかるんですよ。『資本論』を読んで資本の論理がわかると、お手伝いをしたら子どもに今日は500円あげるとか、そういうことをしなくなる。
家族の中で金を介在させたらいけないんだという、そういうことが理屈の上でよく理解できるようになってくる。そうすると、直接的な人間関係が大切になってくるわけですよ。合理性とは違うこと、お金には換算できないものがあるんだと言って、たとえば親が家族旅行の重要性を認識できる。

【144ページ】
池上 すべては資本の論理に流れていってしまい、人生も家族も、すべてがお金に換算されてしまうのが資本主義なんだということを『資本論』は描いている。私たちが人間性を失わないようにするには、そのすべてをお金に換算する論理から抜け出る力が必要なんだと。

佐藤 佐藤そうです。だから、そこで恐いのは数字なんですよ。介護保険が導入されました。介護労働を家族だけでやるというのは、これは無理です。ところが一方で、介護保険で点数制になってくると、家事労働や介護が全部お金に換算できるようになります。おばあちゃんを一回お瓜呂に入れるのが、介護保険なら何点、それなら私にもいくらちょうだいというふうになってくる。資本主義がどんどん浸透している中で、そういう考え方は本来の人間のあり方ではないというメッセージを、どうやって伝えればいいのか。そういうところと関係してくると思うんです。
そのためには自分の家の中で、とくに子どもとの関係で、どこか資本の論理とは違うところを意図的に作らなければいけません。
(つづく)

『希望の資本論』その14

【125ページ】
佐藤 何を言いたいのかというと、宇野経済学を別の形で見なければいけないということです。資本主義はそう簡単に壊れない。簡単に壊れないんですが、このシステムには相当問題がある。それは人間をボロボロにする危険性がある。だから、とりあえずうまくつきあっていかなければいけない。
もしかしたら、いつかこのシステムはなくなるかもしれないが、それは近い未来には来ないような感じがする。それでも、資本主義にとらわれないような生き方はできるわけです。池上さんを見ていると、『資本論』の精神が生きていると思います。というのは、経済合理性にあわないことを意図的にやっておられますから。大学の先生とか。

【134ページ】
池上 現代において『資本論』を学ぶことは、いまの資本主義社会を相対化する、これだけがすべてじゃないよ、これはこうやって動いているんだ、そして自分はその中でどういう立ち位置にいて、その資本の運動とどうつきあっていけばいいのかな、と考えるきっかけを与えてくれる。自分が生きている社会を、相対化する力を与えてくれると思うんです。
(つづく)

『希望の資本論』その13

【116~117ページ】
佐藤 浦和高校の応援団の先輩、中学校も私と同じだった人が東京教育大学に行って革マル派に入咳中核派に捕まって殺されてしまった時に、『革命的暴力とは何か?』というこの本が出た。中核派の暴力は「無原則な政治屋どもの殺し」で、革命性がない。しかしわれわれ輩命的に行使する暴力は正しい、という本なんです。自分たちの暴力は正しくて、相手の暴力は間違えていると。

池上 さらに言うと、「この野郎」と言って暴力をふるってはいけないけれど、組織決定に基づいてきちんとやるなら、正しい暴力であると言っています。

佐藤 それから遅れて、今度は革マル派が早稲田大学の中核派の人を殺しちゃったんですよ。その時は、今度は中核派のほうが『内乱期の反革命』(前進社)という本を出して、それは「反革命、革マルの本質」について書き、革マル派を徹底的に解体すれば世の中は良くなるといった論理を立てて、両方が殺しあいの世界に入っていくんですよ。

【120ページ】
佐藤 社青同のオルグの人が、私の行動に問題があると言って京都までシメに来た。その人から、社共統一戦線を取っているんだから、社会党系の社青同は共産党系の民青と握って新左翼系である同志社の学友会や神学部の自治会とはケンカしろと言われて、それは私は嫌だと言いました。
 (つづく)

『希望の資本論』その12

【107ページ】
佐藤 これはブラック企業もそうなんですよ。人間を物として見るということが現在の主流派経済学にも、テロリズムの哲学にもある。それに対してヒューマニズムの回復を強く唱えたのが、ピケティ氏ですね。人間は物ではない。人間は人間なんだと。

【113ページ】
佐藤 『資本論』を読んで、どういう意味があるかと言うと、やはりこの社会の構造の限界がわかる。それと同時に、お金や出世だけにとらわれた人生ではだめだということも見えてきます。逆に、ある程度働かないと生きていけないということがはっきりわかるから、世の中をひねくれた形で見る人間にもならない。
そういう意味で、『資本論』の論理をきちんとおさえていると、私は非常に役に立つと思う。世の中にいくつか役に立つ思想はありますが、『資本論』はそのうちの一つだと思います。
(つづく)

『希望の資本論』その11

【99~100ページ】
佐藤 いずれにしても、安倍政権が狙っているのは何かというと、『資本論』に書いてある通りのもので、システムを維持するために、女性をどう使えるかということなんですね。その結果、いま表れているのは、女性の星みたいにもてはやされている人は「名誉男性」というような扱いになるということです。~。
外務省にキャリアとして入った女性でも、メチャクチャになってしまった人がいます。例えばアルコール依存症です。それが原因で途中退職し、亡くなってしまった。しかし、外務省ではその人のことはすっかり忘れ去られてしまいました。

【102~103ページ】
池上 それから、マルクスも書いていますが、労働力の再生産の費用をどんどん引き下げようといういまの資本の運動があって、そもそも社会的な再生産費自体を下げる働きがある。それこそ吉野家の牛丼で。

佐藤 100円ショップで。

池上 あるいは日高屋のラーメンとか、服はユニクロでと。とりあえず、そういうものを着たり食べたりすることによって、相当安く生活できるようになりました。だからその分、企業は賃金は上げなくてもいいんだよ、ということになる。正規労働者に比べてはるかに給与水準が低い非正規労働者でも、ギリギリ生活できる程度までに、社会的な生活費がこのところずっと引き下げられてきたんだろうと思います。これはマルクスが指摘した通りのことが起きていると思うんですよ。
 (つづく)

『希望の資本論』その10

【80ページ】
それで1848年の『共産党宣言』の時点でモーゼス・ヘスは同じ陣営にいた。ところが70年代になると、ヘスはユダヤ人の国家をパレスチナに建てようとするシオニズム運動の理論家になって、結局そのヘスの流れから鱗ルツルが出てきて、イスラエルの建国につながった。そうすると、マルクスの流れというのは、一つにおいては、マルクス、エンゲルス、レーニン、そしてスターリンという形になって、70数年間、ソビエト体制を作る源泉となったのですが、もう一つの流れというのは、イスラエルの建国につながった。あれだけ小さい国ですが、アメリヵに強い影響を与え、いまだに国際秩序の混乱の原因になる国家を作ったというのも、根っこはマルクスたちなんです。
結局、いまだに思想が社会を動かしているんですよ。どういうフレームを作るかということが非常に重要なんです。
それで困ったことが持ち上がった。いままで、マルクス主義は、階級という切り口で問題を解決しようとしてきたのですが、階級という切り口に共鳴して熱くなる人の数が限られている。だから、ナショナリズム研究で有名なアーネスト・ゲルナーは「郵便の誤配」を強調する。「目覚めろ、立ち上がれ」という郵便を、神様はちょっと勘違いして、階級ではなく民族に届けてしまった、と言ったんです。

* モーゼス・ヘス(1812~1875)
ドイツの社会主義者、哲学者。ボンのユダヤ系家庭に生まれる。「ライン新聞」の創刊に関わるなど、マルクス、エンゲルスらと並んでドイツにおける社会主義の祖と言われる。その後、マルクス、エンゲルスとは別の道を進みシオニズムを主張する。
* テオドール・ヘルツル(1860~1904)
オーストリアのユダヤ人作家。ブダペストに生まれる。政治的シオニズムの祖とされる。1896年、「ユダヤ人国家」を発表、翌年には世界シオニスト会議を開催した。

【84ページ】
佐藤 それ(大量殺人の思想)は、原爆投下の論理にも通じますね。日本は異常なイデオロギーに取りつかれていて、戦争を継続していくだろう。だから、ここで原子爆弾を使えば、本土決戦によって失われるアメリカ兵の命だけではなく、日本人の命も救われる。ゆえに、原爆投下は人道的なんだと。こうした考え方は、日本人からすると受け入れ難いし、生理的な嫌悪をもよおすけれども、アメリカ人の中ではいまでも通用しています。
(つづく)

『希望の資本論』その9

【73ページ】
池上 たとえばムハンマドが生きていた1400年前の戦争の時のルールを、そのまま21世紀の現代に生かそうとする。戦争をする時にムハンマドが何をやったのかとか、あるいはムハンマドが率いる軍団が捕虜を取った時に、捕虜をどうすればいいか。殺す、奴隷にする、身代金で人質交換をする、釈放をする、という四つのやり方を取っていたのを、いまに照らし合わせて、捕虜を取ることは良いことであり、その四つのどれを選択してもかまわないというように解釈する。当時のさまざまな動きを現代にそのまま使うわけです。

【74~75ページ】
佐藤 イスラム原理主義は、共産主義やファシズムと比べた場合、決定的な違いがあるんですよね。生産の哲学がないんです。生産の哲学がなくて、分配の哲学しかない。しかし、飯を食わないと生きてはいけない。だから、どこかから取ってくるというように、常に外部を想定していなければなら
~。資本主義を解析すると、一つは、①「商人資本形式」です。~。次に、②「金貸資本形式」です。~。
近代の資本主義では、③「産業資本形式」といって、労働力と生産手段(機械や原料など)を合わせて、時間をかけて商品をなるべく安く生産し、なるべく高く売る。イスラムでは、共同経営者になってここに入ってしまうことで、利息を取ってはいけないという問題を見えなくする、という形なんですよね。
(つづく)

『希望の資本論』その7

【46ページ】
佐藤 『資本論』を読むべき最大のポイントは何かというと、目には見えないが確実に存在する資本の力を見きわめるということ。資本はお金ではありません。たとえば「AERA」の編集部で働いている時間においては、一人一人の労働力は商品化されている。だから、AERA編集長の言うことには従わないといけないし、「嫌だな、佐藤なんかの話を聞きたくないな」と思っても、編集長命令だと聞かなければいけない。それはその時間の範囲において、労働力が商品化されているからです。

【48~49ページ】
佐藤  。実はマルクスの『資本論』のもう一つのポイントは、どうやって資本主義が出てくるかということで、資本主義とは実は偶然からできている。たとえば地球寒冷化にともなって毛織物市場が拡大し、毛織物の原料である羊毛の需要も増大し、その結果イギリスで囲い込み(エンクロージャー)が起きた。つまりもし地球が寒くならなければ(笑)、羊毛
は必要なかったんです。~。
それとの関係で言うと、自分たちにとっての外部があるかどうかということになってくると思います。資本主義が恐いのは、その運動の中に入ってしまうと、外が見えなくなってしまうことです。会社での自分の出世しか見えなくなってしまうとか、あるいは息子や娘の受験しか見えなくなってしまうとか。こういうふうにして資本主義システムの内部で頑張ることしか考えられなくなってしまう。
(つづく)

『希望の資本論』その6

【40~41ページ】
佐藤 そうすると年収150万円そこそこなら、100円ショップを使っていれば食べていくこともできるし、部屋だって新宿区でも築40年以上になった場合なら、3万円以下で借りられます。しかもトイレ共用の場合にはもっと安くなります。住宅費さえ削れば、実は生きていくだけだったら、そんなに大変ではない。
* ホワイトカラー・エグゼンプション
ホワイトカラーに対して、労働法上の規制を適用免除するというアメリカなどで行われている制度。労働時間ではなく、仕事の成果、能力に応じて評価をするとして、日本でも「高度ブロフエッショナル労働制」という名称で、2015年の通常国会で、政府が労働基準法の改正をめざしている。

【42ページ】
池上 最近、都道府県別による大学進学率が発表になって、進学率が最低の鹿児島県は32.1%、最高の東京都では77.5%と40ポイントの差があり、この20年で最上位と最下位の差は2倍になったそうです。

【44ページ】
池上 それとともに日本も、教育と生涯給与がリンクするアメリカ型のシステムになってきた。これによる社会的なストレスがどうなるかというシュミレーションをきちんとしておかないと、大変なことが起こるかもしれない。
(つづく)

『希望の資本論』その5

【36~37ページ】
佐藤 そのかわり、社会主義の理想は一つだけ実現していた。すなわち、労働時間の短縮です。2カ月ガッチリ休みを取り、9時から5時まで仕事なのですが、9時に家を出て、昼休みを2時間とって買い物をして、5時になったら誰一人会社にはいないという(笑)。そういった形で実質3時間労働くらいになったわけです。
そうして、崩壊寸前になっていたあの国が、なぜ生き残ったかというと、1970年代にオイルショックが起きたからです。国内で生産していた原油と天然ガスの価格が上がったため、それを切り売りしてしのいだわけです。しかし、結局91年に崩壊したのはなぜか。2010年にゴルバチョフ元書記長が来日した時に、サシで話しました。~。
「ソビエトが崩壊した理由を一つだけあげると、何だと思います?民族問題ですか」と私が聞いたら、「それは違うな」と。「俺はサウジについて、あまりにも知らなかった」と。「サウジが原油を増産するということの意味を、われわれはまったくわかっていなかった」と言うんです。~。

【37ページ】
佐藤 結局、ソ連では労働力商品化を克服したところで、どうやって働く人間を作っていくのかということができなかった。
 (つづく)

『希望の資本論』その4

【34ページ】
佐藤 ソビエトの子どもって、お金で買えるものが限られているからお小遣いは欲しがらない。お金がいくらあったって、買えるものはパンとか塩とかノートとか。砂糖だって配給券がないと買えないですからね。そうすると、物をもらうことには関心があるんだけれども、お金には関心ない。だから、そういうふうな資本主義の矛盾と言われても、よくわからない。

【35ページ】
佐藤 社会主義経済学という仮面のもとで、近代経済学をやっていたわけです。だから逆にソビエトの人たちは資本主義の一番の問題、宇野派などでいう労働力商品化がわからなかった。要するに労働力は家庭の消費、家族関係の中でしか生産できない。良質な労働力というのは、親が子どもをきちんと育て、教育をして、規律などを身につけさせることによって出てくる。そのことが、ソビエトはよくわかっていなかったんです。
(つづく)

『希望の資本論』その3

【23ページ】
池上 マルクスは革命でひっくり返さなければいけないと考えたのですが、ピケティ氏はやはりどこかで人間の理性を信じていて、「民主主義によってそれを押さえなければいけないんだ」と、そういう言い方をしていました。

【26ページ】
佐藤 ピケティ氏について私が問題だと思うのは、自分の力で変えるという発想が少ないところ。今後も税金を徴収することで、国家に再分配してもらう・国家にお願いする、という発想です。それはある種のエリート主義で、代表制なんです。
だからこれは対話的な理性を強調するユルゲ・ハーバマスと一緒で、外部の世界がないということです。
(つづく)

『希望の資本論』その2

【10ページ】
池上 日本でも水野和夫さんの『資本主義の終焉と歴史の危機』(集英社新書)が話題になりました。長期のゼロ金利が示すのは、資本を投資しても利潤の出ない資本主義の「死」であり、日本はその最終局面にいち早く立っている、という本です。

【15ページ】
佐藤 ちなみに、共産党は企業の内部留保が多くなれば賃金が上がると考えています。だから共産党と関係の深い全労連〔全国労働組合総連合)は、「企業の内部留保が増えているのだから、その分を賃上げに回せ」と言った。しかし、内部留保というのは、企業が投資をして資本を増やしていくために必要なお金であって、賃金はその前の段階で決まってしまっているわけです。
しかし、安倍さんが全労連の主張に乗っかる形で経団連に賃金を上げさせた。これは実はムッソリー二と同じやり方で、イタリア・ファシズムの経済理論と同じなのです。
 (つづく)

『希望の資本論』その1

先日、『希望の資本論』(池上彰・佐藤優共著、朝日新聞社、2015年3月31日発行)を読み終えました。今回も抜き書き帳を作成しましたので、ご参照いただければ幸いです。

【1ページ】はじめに(池上)
資本主義は勝利した。多くの人がそう思ったのですが、社会主義と魅力争いをしてきた資本主義は、ライバルの社会主義が消滅した途端、厚化粧することを止め、にわかに醜悪な側面を見せ始めました。
社会主義が力を持っていると、いつ労働者は革命を起こすかもしれない。それを恐れた資本主義国では、社会保障や社会福祉に力を入れ格差の是正にも努めてきました。これが、厚化粧です。
【2ページ】
とりわけ教育格差の進展は、過去の資本主義経済を支えてきた良質な労働力を再生産できなくしています。基本的な漢字すら読めない若者たちが再生産されているのです。これでは、資本主義経済発展のために働ける労働者にはなりえません。
資本主義の発展それ自体が、資本主義の墓掘り人を生み出す。マルクスの予言通りのことが起きつつあるようにも見えます。
【3ページ】
難解な書物と格闘する。その経験があって初めて人は、論理的な思考力を得るのです。これこそが、最近流行の反知性主義の毒に対する解毒剤あるいは予防薬になるのです。
というわけで、佐藤氏と『資本論』をめぐる対談と相成りました。
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